ブログ 町の法律日記

相続等で「負」動産を取得したら

所有権不明土地関連法その3

今回は、前々回、前回に続き、
令和3年4月21日に成立して同月28日に公布された
「民法等の一部を改正する法律」(令和3年法律第24号)及び
「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」(令和3年法律第25号)
(上記をまとめて「所有権不明土地関連法」といいます。)について、
令和5年4月27日から施行される
「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」(令和3年法律第25号)に絞って
ご紹介することとします。

しかしこの法律、
現時点ではどの程度有用なものかは
甚だ疑問・・・というものです。
どんな法律なのか?
以下で概要を述べていきます。

令和5年4月27日施行!

「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」は、
一言でいうと、相続又は相続人に対する遺贈によって取得した土地を手放して、
国庫に帰属させることを可能とするものです。

売れなくて、維持管理等のコストばかりがかかる不動産のことを
「負債」の「負」をとって「負動産」なんて揶揄されることがありますが、
こういう負動産を、売れないのであれば国庫(国)に引き取ってもらいたい、
というニーズはかなりあるのです。

そこで、上記の法律ができて、
国庫に帰属させる制度が「創設」された、
ということになっているのですが、
実は、民法にも似たような規定が既に存在しています。

民法には、不動産の所有者が死亡した際、
相続人が不存在である場合には、所定の手続を経たうえで
最終的に当該不動産の所有権を国庫に帰属させる旨の規定があるのです。
しかし、これが適用される例がとても少なくて、
お世辞にも「使える」制度とは言えないものでした。

今回施行される法律は、
そこから一歩踏み込んだものと言えます。
が、国庫に帰属させられる「負動産」は随分と限定されているため、
実用性に欠ける感が否めません。

対象はどんな不動産?

「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」が適用される不動産は、
まず、相続又は相続人に対する遺贈によって取得した土地に限定されています。
建物は対象ではありません。

そのうえ、以下に該当する土地は、
対象にならないか、国庫帰属が承認されません。
(1)建物の存する土地(要するに、更地でなければなりません)
(2)抵当権等の担保権又は使用及び収益を目的とする権利が設定されている土地
(3)通路その他の他人による使用が予定される土地
(4)土壌汚染や埋設物がある土地
(5)境界が明らかでない土地その他の所有権の存否、帰属又は範囲について争いがある土地
(6)崖(一定の基準あり)がある土地のうち、
その通常の管理に当たり過分の費用又は労力を要するもの
(7)土地の通常の管理又は処分を阻害する工作物、
車両又は樹木その他の有体物が地上に存する土地
(8)その他、通常の管理又は処分をするに当たり過分の費用又は労力を要する土地

・・・手放したくても手放せない土地が結構あるな、
と思っちゃいますね。

ともあれ、上記に該当しない土地を
相続又は相続人に対する遺贈によって取得することになって、
「お金ばっかりかかるし売れないから手放したい!」と
シャウトしたくなった場合に、
法務大臣に対して、
その土地の所有権を国庫に帰属させることについての
承認を申請することになります。

なお、当該土地が共有状態である場合には、
共有者全員で承認申請しなければなりませんので、
意見が割れたり、所在不明の共有者がいる場合には、
相当骨が折れることになります(詳細は前回のブログをご参照ください)。

で、これで終わりではありません。
最後にもう一山あります。

上記の承認申請をした後、法務大臣(法務局)による
実地調査等の要件審査があるのですが、
承認申請者は、その審査手数料を負担する他、
晴れて国庫帰属を承認された暁には、
ありがたいことに、
土地の性質に応じた標準的な管理費用を考慮して算出した
10年分の土地管理費相当額の負担金を納付しなければならない、
という特典が漏れなく付いてきます!

で、上記10年分の土地管理費相当額って?
と思いますよね。
参考として示されているものによると、
現状の国有地の標準的な10年分の管理費用は、
粗放的な管理で足りる原野であれば約20万円、
市街地の宅地(地積200㎡)であれば約80万円、
だそうです。

結局、かなりの出費を強いられることにはなるんですね・・・。

承認申請者は、上記負担金の額の通知を受けた日から30日以内に
負担金を納付しなければならず、
納付しないときは、承認の効力が失われてしまいます。

結びに

ここまで書いてきて、
やっぱり、実用性に乏しい気がする法律です。

そんな訳で、
この「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」の附則に、
「政府は、この法律の施行後五年を経過した場合において、
この法律の施行の状況について検討を加え、
必要があると認めるときは、
その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。」
と規定されています。

政府には、実際に「使える」法律なのかを
よ~く検討していただきたいな、と思います。
令和10年に、ですけれど。

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