ブログ 町の法律日記

相続登記義務化がスタート!

相続登記とは

今回は、以前このブログでも
「所有権不明問題にメス!」(令和4年7月19日更新)でご紹介した
相続登記の義務化についてお話します。

「相続登記」とは、
不動産の所有者として登記されている人(これを「所有権登記名義人」といいます。)が
亡くなった場合に、その相続人が、「この不動産の所有権は自分に移った!」と
対外的に主張するために、管轄法務局に申請する(登記申請する)ことの俗称です。

堅苦しい表現を用いると(用いるなって?)、
相続を原因とする所有権移転登記申請又は持分全部移転登記申請等
のことを言います。

その相続登記の申請が、令和6年4月1日から、
義務になりました。

なお、「所有者は亡くなったけど、何も手続をしていないし、
自分たち(相続人たち)は相続した覚えがないから知らないよ」
という訳にはいきません。

相続の手続(例えば遺産分割協議)をせずに放置していたとしても、
所有者が亡くなった瞬間に、
その相続人たち(配偶者、子、孫、父母、祖父母、兄弟姉妹、甥姪等、
誰が相続人になるかはケースバイケース)に、
各法定相続分の割合で権利が帰属しているものと
推定されます。

相続人の方々は、その不動産の取得を知った日から
3年以内に相続登記の申請をしなければ、
正当な理由なく申請しなかった場合を除き、
10万円以下の過料に処せられる恐れがあります。

なお、相続登記を含む不動産登記の専門職は、
司法書士です。
たまに行政書士でも相続登記ができると
思っている方がいらっしゃいますが、
それは誤りです。
行政書士は相続登記を含む不動産登記の申請ができませんので、
間違えないようにしましょう。

しかし、相続は発生したものの、
相続登記をするお金が無いし、
でも登記しないと過料がかかるって・・・
どうしたらいいの!?
と思われている方もいらっしゃると思います。

そんな方のために、一応、
救済措置(?)が用意されています。

相続人申告制度

相続登記は、諸々の事情があってできない。
でも、義務違反による過料は免れたい。

そんな時には、相続人申告制度の利用を
検討してもいいでしょう。

この制度を利用する(専門職に依頼する場合は、司法書士と弁護士のみが受任できます。)と、
ご自身で申告した場合、お金もかからず、過料もかからなくなります。

が、以下の理由から、あまりお勧めできません・・・。

申告に必要な書類が結構ある

相続人申告申立は、
相続が発生している不動産を管轄する法務局に、
相続人が「私が所有者の相続人(の一人)です」と
申告する手続です。

そのため、相続登記で必要となる書類よりはだいぶ少ないものの、
所有者の相続人であることを証する戸籍謄本等の他、
住民票の写し等を用意する必要があります。

相続人が配偶者や子である場合は、とてもシンプルですが、
例えば兄弟姉妹、甥姪関係等の場合には、
用意しなければならない書類が多くなってきますので、
やや難易度が上がる感があります。

持分が記載されない

「持分が記載されない」と言われても、
「???」な方が少なくないと思われます。

例えば、所有者が亡くなって、
相続人が配偶者と子2人(AとB)の計3名だったとします。

遺産の分割方法について何も取り決めをしなければ、
所有者の不動産は、
配偶者が持分4分の2、子AとBが各持分4分の1で
共有していると推定されます。

ここで、例えばAが単独で不動産を相続するのであれば、
相続人3名全員でその旨の遺産分割協議をして、相続登記を申請すれば、
Aが単独で所有権登記名義人になります。

そうでなく、例えば法定相続分で共有にしたいな、というのであれば、
配偶者持分4分の2、A持分4分の1、B持分4分の1と明示された
相続登記をすることもできます。

ところが、相続人申告申立をした場合、
単に、申告をした人が「相続人です」ってな具合で登記され、
例えばAが申告をしても、「持分4分の1」は明示されません。

これはデメリットと言えるのか・・・?
以下のようなケースでは、
デメリットと言えなくもないと思われます。

固定資産税等の負担(懸念)

一定の評価額を超える不動産には、
固定資産税(都市計画税も賦課される自治体とされない自治体があります。)が
かかります。

一般的に、固定資産税は所有者が納めることになりますが、
所有者が共有の場合や不明(相続登記をしていない)の場合には、
当該不動産の存する自治体に住んでいる相続人のところに
納税通知書等が送られることが多いです。

共有であっても、共有持分で固定資産税等を分けて、
それぞれの共有者に納税通知書等を送る自治体は
基本的に無いと思われます。

不動産の存する自治体に住んでいる相続人がいない場合は、
法定相続分の多い相続人や、近くに住む相続人に宛てて
納税通知書等が送られてくるケースが少なくないでしょう。

これが、ちょっとネックになるのかもしれません。

例えば、先の例で、不動産が関東地方にあるとして、
配偶者とAさんは、当該不動産又はその近隣自治体に住んでいる。
しかしBさんは、九州地方に住んでいる。
で、相続人は皆、相続登記を申請したがっていないとします。

ここで、Bさんだけが、過料を免れるために
先んじて相続人申告申立をした場合・・・。

「Bさんが」当該不動産の「相続人です」と
バンッと登記され、持分の4分の1は明示されません。

そうなると、当該不動産にまつわる税や管理等の問題が
Bさんのもとに降ってくる・・・
持分4分の1しかないのに・・・・・・
という可能性が無きにしもあらずです。

あくまで懸念ではありますが、
荒唐無稽な話ではないと思います。

まとめ

相続人申告制度は、相続登記の義務化と共に、
まだ始まったばかりですので、
現状では何とも言えないところがあります。

しかし、申告をすることによって過料を免れても、
不動産の相続手続(相続登記)が未了であることには
変わりなく、「相続登記しなければならない」状況に
変わりありません。

相続手続は、時間が経てば経つほど複雑になっていくことが多いため、
早めに済ませるのがベストです。

従って、結論としては、
やっぱり相続登記をちゃんとした方がいい、
ということになるでしょう・・・。

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