ブログ 町の法律日記

権利行使しないなら、私が

代位とは

前回のブログの最後で、「代位登記」というものに触れました。

「代位」とは、なんぞや?
このブログは講学を目的とするものでないため
あーだ、こーだと説明はしませんが、
代位とは、ぼんやり感覚的に言うと、
本来その立場に無い人(Aさん)のところに
その立場にある人(Bさん)の権利が移ることで
本来その立場に無い人(Aさん)が
その立場にある人(Bさん)の権利を行使できるようになること、
って感じでしょうか。

なんのこっちゃ、ですね。
具体例を挙げましょう。

Aさんは、Bさんに100万円を貸している。
その返済期限は過ぎているけれど
Bさんには全くお金が無くて、弁済できない状態。

Aさん、困った。
が、青天の霹靂。

Bさんは、実はCさんに200万円を貸していた!
が、BさんもCさんからお金を返してもらっていない。
それどころか、BさんのCさんに対する貸金返還請求権は
時効が迫っているではないか。
にもかかわらず、Bさんは一向にCさんに
貸金を返すよう請求する様子が無い。
債権が焦げ付いている・・・。

ガッデム!!
・・・というような場合。

AさんはBさんの債権者(債権額100万円)であるものの、
Cさんの債権者でなく、
債権者はあくまでBさん(債権額200万円)です。

Aさんは、Cさんの債権者でない以上、
Cさんに100万円払って!と言える立場にないように思えます。

BさんがCさんから200万円満額と言わないまでも
100万円でも回収してくれさえすれば、
AさんはBさんから100万円を回収できる。
いや、(Aさんに言わせれば)信用できないBさんの事だ、
Cさんから100万円を回収した途端に浪費して
「またお金がありまっしぇ~ん」
と言うかもしれない。

どうにかして回収する術は無いものか!!

ということになってしまうかもしれません。

そこで登場するのが「代位」の規定。
上記の具体例の場合は債権者代位ということになりますが、
まさに、
本来その立場(債権者Bさん、債務者Cさん)に無いAさんのところに
その立場にあるBさんの権利が移る、
即ち、BさんのCさんに対する債権がAさんに移ることで
本来その立場(債権者Bさん、債務者Cさん)に無いAさんが
その立場にあるBさんの債権をCさんに対して行使できるようになる、
それが代位です。

今回は、令和2年4月1日から施行された改正民法のうち、
債権者代位権に関する規定と不動産の代位登記についてのお話です。

なお、代位関連の規定は旧法にもありましたが、
新法で一新されたと言うより、これまでに積み上げられてきた
学説上の解釈や判例法理を明文化することで
旧法の足りないところを補った感が強いと言えましょう。

ゆえに、今回のお話は、基本的には新法で規定されている内容、
民法第423条債権者代位権の要件についての改正、
同第423条の2代位行使の範囲(新設)、
同第423条の3債権者への支払又は引渡し(新設)、
同第423条の4相手方の抗弁(新設)、
同第423条の5債務者の取立てその他の処分の権限等(新設)、
同第423条の7登記又は登録の請求権を保全するための債権者代位権(新設)
を基にして述べていきます。

債権者代位権の要件と行使できる範囲

債権者代位権は、誰でも彼でも
行使できるものではありません。

もともと、「その権利」を行使できない立場なのに
行使できちゃえる代物である以上、当然のことでしょう。

代位権を行使できる人は、
自身の債権を保全するために必要な場合に、
しかも自身の債権額の範囲内に限られます。

さらに、債権の期限が未到来の間は、
現状維持や経済的価値を維持するための
最低限のメンテナンス等(保存行為)を除いて行使することができず、
手取り給与の4分の3の額(又は33万円を超えない額)や
国民年金のように差押えが禁止されている権利、
自己破産で免責された債権等の強制執行によっても実現できない債権は
代位行使することができません。

上述の具体例の場合、
Aさんには自身の債権を保全する必要性があり、
弁済期(返済期限)も過ぎており、
BさんのCさんに対する200万円の貸金債権は
差押え禁止債権でもなければ
強制執行により実現できない債権でもありませんから、
AさんはBさんに代位し、
Cさんに対して債権者代位権を行使できます。

要するに、AさんはCさんに対して直接請求することができます。

但し、BさんのCさんに対する債権は200万円ですが、
AさんがBさんに対して有する債権は100万円ですので、
AさんがCさんに対して請求できる金額は100万円までに限られます。

請求されたCと、無一文のBと、燃えるAと

Aさんは、債権者代位権を行使し、
Cさんに対して直接自身に支払うよう求めることができる、
というのは、先述のとおりです。

既に述べたとおり、AさんがCさんに100万円を請求するのは
法によって認められた正当な権利ですから、
請求されたCさんとしても、
200万円は払えないけど、100万円なら・・・
ということで、Aさんに対して支払ってしまって構いません。

その結果、BさんのCさんに対する債権は
CさんがAさんに支払った100万円を限度に消滅し、
残り100万円となります。
そして、当たり前ですが、
AさんのBさんに対する100万円の債権も消滅します。

BさんがCさんから100万円を回収し、
その金員をBさんがAさんに弁済したのと同じ効果がある訳です。

しかし、例えばBさんがCさんに対して
「随分前に貸した200万円だけど、
あれはどうせ返せないんだろうから
もう、あげるよ(贈与又は債権放棄)」
と言ってしまっていた場合・・・。

債権回収に燃えるAさんが、
Cさんに対して100万円を請求しても
CさんはAさんに対して
「あれはBさんからもらったお金だ(=借金じゃない)」
と言って、支払を拒むことができます。

ガッデム!!!
このような場合、Aさんは諦めるしかないのでしょうか。
Aさんによる債権回収の旅の続きは・・・
次回ということで!

なお、言わずもがな、AさんがBさんに代位した債権は
もともとBさんのCさんに対する権利ですから、
BさんがCさんに対して返還請求することもできます。

代位登記とは

最後に、前回さらっと触れた代位登記について。

代位登記というのは、
その登記の当事者(申請人)になるべき立場に無い人が、
自身の当事者(申請人)に対する債権を保全するために
当事者(申請人)に代位して登記申請するものです。

代位登記は、債権者代位権の規定に基づき認められるものですから、
代位する人が債権者で、代位される当事者(申請人)が債務者の関係にあって、
自己の債権を保全するために必要な場合でなければなりません。

また、債権者が債務者に代位しようとする場合、
保全する必要のある債権が弁済期に達していなければなりませんし、
債権の性質上、差押えたり譲渡できるものでなければなりません。

以上の要件を満たし、代位登記される典型例としては・・・。

債務者が相続した不動産があるのに相続登記をしない場合。

債権者が不動産を債務者名義にして(相続登記をして)、
その不動産に担保権(例えば抵当権)を付けたい時に、
「年月日設定の抵当権設定登記請求権」を
債権者が保全したい債権(「被保全債権」といいます。)として
代位登記をすることができます。

登記請求権も、立派な債権な訳です。

又は、上記のような不動産が強制競売にかけられ、
競落した人が、当該不動産の名義を債務者にする(相続登記をする)場合も、
「年月日抵当権の実行による競売」を原因として代位登記できます。

競落した人とはいえ、死者名義から直接所有権を取得できず、
前提として相続登記をする必要があるのに債務者がやろうとしない
というのは、よくあるケースです。

因みに、前回のブログで私が扱った事件のようなケースでは、
依頼者さん(原告)は、他の共有者さんたち(被告ら)に勝訴した結果、
「年月日共有物分割の共有持分全部移転登記請求権」という債権を有していたので、
代位登記ができたのでした。

ややマニアックな話になってしまいましたので、
今回はこのへんで。

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