ブログ 町の法律日記

債権回収攻防戦(後編)

どんどん登場人物が増えた場合・・・

今回は、旧年中にアップした
「債権回収攻防戦(前編)」(令和7年11月4日更新)の続編、
詐害行為取消請求関連規定の続きになります。

前編のアップからだいぶ時間が経過してしまいましたが、
前編ではこんなケースを挙げ、
詳細を後編、即ち本稿で述べると触れていました。

Aさんは、Bさんにお金を貸している。
Bさんは、Cさんにお金を貸している。
Bさんは、Aさんにお金を返さないばかりか
Cさんに対する焦げ付いている債権を回収しようともしない。

しかも、BさんがCさんに対して
「随分前に貸したお金だけど、
あれはどうせ返せないんだろうから
もう、あげるよ(贈与又は債権放棄)」
と言った。

贈与又は債権放棄なんぞしてしまっては
債権者Aさんを害することになると
BさんもCさんも知っていた・・・。

で、さらに、登場人物が増えます。

Aさんから見て、
Aさん自身はもちろん債権者、
Bさんは債務者、Cさんは受益者
という立場になりますが、
Bさんから得た利益をCさんから受け取ったXさんが
現れたとします。
このようなXさんのことを、「転得者」といいます。

債権者Aさん、債務者Bさん、
受益者Cさん、転得者Xさん・・・。

前編では、上記のケースを少し触れたのですが、
本稿では、Xさんからさらに(Bさんから得た)利益を受取ったYさん、
Yさんから受け取ったZさん・・・
と、果てしなく登場人物が増えていってしまった場合、
Aさんは、BさんとCさんが通謀して為した
贈与又は債権放棄の利益を得ている「どの人」に対して
詐害行為取消請求できるのか、
はたまた、できないのか・・・。

今回は、Aさんがどこまで詐害行為を追求できるかについて
重点的に見ていきます。

ケース別に検討

前編のおさらいも含めて、
Aさんが詐害行為取消請求できるか否かを
ケース別に見ていきましょう。

Aさんは、Bさんにお金を貸している。
Bさんは、Cさんにお金を貸している。
Bさんは、Cさんに対する債権を除くと、無資力状態。
なのに、BさんはCさんに対する債権を放棄してしまった。

このようなケースでは、上記の債権放棄について
BさんにはAさんを害する気持ちなど全く無かった(信じがたいことですが。)としたら、
Aさんは詐害行為取消請求できません。

BさんにAさんを害する意図があっても、
Cさんにその意図が無ければ、
やはりAさんは詐害行為取消請求できません。

Aさんが詐害行為取消請求できるのは、
BさんとCさんが通謀して、
Aさんを害する意図を有していた場合に限られることは
前編でお話ししたとおりです。

では、BさんとCさんが通謀していて、
CさんがBさんから得た利益を
何も事情を知らないXさんに与えた場合。

「BさんんとCさんが通謀していて
根っこの部分が真っ黒なんだから
当然Aさんは詐害行為を主張できる!」・・・のか?

答えは、ノー。
XさんにAさんを害する意図が無ければ、
Aさんは詐害行為取消請求できません。

では、Cさんとの取引後にXさんが事情を知り、
「なるほどAさんは困るよね。
でも、オイラはCさんから利益を得ただけで、
Aさんが困るかどうかなんて知ったこっちゃないぜ」
と高笑いしている場合。

激怒したAさんは、鉄槌を下せる!
・・・かと思いきや、できません。

XさんのAさんを害する意図の存否は
Cさんとの取引時で判断されるため、
後から知ったとしても(クロだとしても)
Aさんを害する意図無し(シロ)と解釈されます。

よって、道義的な問題はさておき、
哀れAさんは、詐害行為取消請求できません。

では、Cさんとの取引時点で何も事情を知らなかったXさんが、
Aさんを害することについて知っているYさんに
(もともとBさんから得た)利益を与えた場合・・・。

捲土重来!
Aさんは「再びクロになった!」として
詐害行為取消請求できる・・・か?

覆水盆に返らず・・・。

残念ながら、一度「シロ」になったものは、
その後の転得者(Y)が「クロ」だったとしても不問。
Aさんは詐害行為取消できません。

上記のケースで、Xさんが後から事情を知って
「クロ」になった場合も、
当然、Aさんは追求できません。

以上の原理は、上記から先、
転得者として新たにZさんが現れようとも、
何者が現れようとも貫かれます。

要するに

以上のように、
Aさんが詐害行為取消請求できるのは、
Bさんは勿論のこと、
その後のCさん、Xさん、Yさん・・・と続く
Bさんの利益を得た全ての登場人物が、
その取引時(転得時)に全員「クロ」であった場合に限られます。

途中で「シロ」があった場合は、
その後の転得者がたとえ全員「クロ」であったとしても駄目、
一度「シロ」になった段階があれば、
Aさんはもう追えなくなるのです。

その他の関連規定

最後に、ちょっと細かい規定について
全てでないものの、補っておきます。

前編、後編の2回にわたって見てきた詐害行為取消請求の規定ですが、
じゃあ、Aさんは誰に対して請求するのか、
言い換えると誰を被告として提訴するのかというと、
債権者Aさん、債務者Bさん、受益者Cさんの
三者の関係であれば、受益者Cさんを被告とします。

その後、登場人物が増えて転得者が現れた時は、
転得者を被告とします。

そして、債権者Aさんは、
その被告たる受益者又は転得者から
直接自己に現物の返還又は価額の償還をするよう
求めることができます。

で、例えばBさんとCさんが行った詐害行為が取り消された場合で、
CさんがAさんに返還又は価額の償還等をしたときは、
CさんはBさんに対して、渡したものを返すよう請求でき、
仮にBさんが返還困難であれば、価額の償還を求めることもできます。

これにて、一件落着?

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