ブログ 町の法律日記

代理人の行為能力

誰でも代理人になれるのか?

今回は、令和2年4月1日から施行された改正民法のうち、
代理人の行為能力についてご紹介します。

「代理人」とは、本人からの委任等により代理権を得て、
本人に代わって法律行為等をする人のことを言います。

代理人は、相手方に、
本人を代理する者であることを告げて(これを「顕名」といいます。)
法律行為等を為すのであり、その効果は本人に直接帰属します。

「行為能力」とは、
自分自身(単独)で有効に法律行為を行える能力のことですが、
これとは別に、
「意思能力」というものもあります。

「意思能力」とは、行為の結果について理解できるだけの精神的能力を言い、
7~10歳くらいであれば意思能力がある、
というのが大体の目安になります。

意思能力と行為能力の違いについて、
もうちょっと掘り下げてみてみましょう。

意思能力は、有り、無しに分けられ、
意思能力が無い人が法律行為等をしても、
無効になります。

行為能力は、年齢や意思能力の程度に応じて、
有り、不十分、無しに分けられ、
不十分であったり無い場合には、行為能力が制限されます。
このように、行為能力が制限される人のことを
「制限行為能力者」と言います(そのまんま)。

例えば、年齢によって制限行為能力者となるのが
未成年者(18歳未満)。
行為能力によって制限されるのが
成年被後見人、被保佐人、被補助人等。
〔※「司法書士の成年後見業務とは?」(2021年12月16日更新)を参照〕

制限行為能力者が法律行為等をした場合、
制限行為能力者の法定代理人(未成年者の場合は親権者、その他の場合は成年後見人等)は
取消すことができます(但し、原則として保佐人、補助人に取消権はありません)。

具体例を挙げると、例えば12歳で意思能力があったとしても、
未成年で制限行為能力者ですから、
当該未成年者が為した法律行為について、
親権者(法定代理人)は取消権を行使することができる、
ということです。

では、5歳の未就学児が法律行為をした場合は
どうなるのか?

5歳は通常、意思無能力者ですから、当該法律行為は無効です。
が、一方で、
未成年者でもあるため、制限行為能力者でもある。
ということは、無効でなく、法定代理人が取消す・・・ことになるの?
というギモンにぶち当たります。

この場合は、無効と取消しの二重効が認められており、
無効と取消し、どちらを主張することもできる、
ということになっています。

では、以上を前提として、
今回のテーマ「代理人の行為能力」について
触れることにしましょう。

まず、代理人には、どのような人がなれるのか?
先述のように、本人からの委任等により代理権を得て、
本人に代わって法律行為等をする訳ですから、
誰でもよさそうですよね・・・。

そうなのです。

別に、弁護士さんや、司法書士等に委任して
代理人になってもらわなくても、
専門的知見を持たない方に
代理人になってもらうことができます。

もちろん、制限行為能力者に
代理人になってもらうことだってできるのです。

これは、本人が、
(例えば制限行為能力者であっても)〝この人〟に
代理人になってほしい!と思うのであれば、
その代理人が為した法律行為の効果がどのようなものであれ、
委任した自分自身に帰属する訳ですから、
誰を代理人にしても構いませんよ、
という考えの現れです。

もっと血も涙も無い表現を用いると、
不利益を被っても、委任した人の自己責任ってことで。
というハナシです。

しかし、代理する人が、
業として(反復継続して報酬を得る目的等で)受任する場合、
当該業務の内容により、
弁護士でなければ受任できないもの、
司法書士でなければ受任できないもの、
税理士でなければ受任できないもの、
行政書士でなければ受任できないもの等が、
キチンと弁護士法、司法書士法等の「法律」で
定められています。

破れば当然、違法行為です。

委任する人は、相手がちゃんと
当該業務の代理人になれる資格の登録者か否かを
確認するようにしましょう。

以上が代理人の行為能力についての大まかな説明ですが、
旧民法では、この代理人の行為能力については、
「代理人は、行為能力者であることを要しない。(第102条)」
としか明示されていませんでした。

それが、新法では、ご丁寧に
制限行為能力者が代理人としてした行為は、
例えそれがトンデモな行為だったとしても、
「代理人は行為能力が制限されている人だから~」
という理由で取り消せませんよ、
(フリエキ ヲ コウムッテモ、イニンシタヒト ノ ジコセキニン デス。)
という趣旨の文言が明示されました。

但し、制限行為能力者が他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為、
例えば、未成年者の父親(親権者・法定代理人)が被保佐人で、
当該父親が為した行為については、制限行為能力者の保護の観点から、
取り消すことができる、と規定されています。

制限行為能力制度の目的を十分に達せられるようにするための
条項と言えましょう。

なお、補足として同意権についても少々。
制限行為能力者である被保佐人が、
保佐人の同意を要する行為として民法13条が規定されていますが、
{概要については〔※「司法書士の成年後見業務とは?」(2021年12月16日更新)を参照〕}
被保佐人が他の制限行為能力者の法定代理人として為す行為も
同意を要する行為として追加されています(上述の改正との整合性が図られた感じですね)。

法定代理人の追認と同意

追認は、取消しができる行為について
完全に有効なものにする意思表示であり、
言ってみれば取消権を放棄するものですから、
かなりの慎重さが求められます。

そこで、新法では、
あまりよく分からない状態で為した追認は無効とし、
「取消権を有することを知った後」にしなければ
当該追認は有効でないことを明示しています。

一方で、成年被後見人を除く
制限行為能力者(未成年者、被保佐人、被補助人)本人が、
その法定代理人(親権者、保佐人、補助人)の同意を得て追認する場合は、
制限行為能力者本人があまりよく分からない状態であっても
完全に有効なものとなります(追認が有効と認められる)。

また、制限行為能力者本人でなく、
その法定代理人又は制限行為能力者の保佐人若しくは補助人が
直接追認する場合も
完全に有効なものとなります。

このように、〝基本的に誰でもなれる〟けれども、
法定代理人等になる人って責任重大だ、
と言えるでしょう。

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