ブログ 町の法律日記

所有権不明問題にメス!

所有権不明土地関連法の施行

改めて言うのも何ですが、司法書士は、その名称からして法律を扱う業務ばかりです。
司法書士法第1条(司法書士の使命)には、
「司法書士は、この法律の定めるところにより
その業務とする登記、供託、訴訟その他の法律事務の専門家として、
国民の権利を擁護し、
もつて自由かつ公正な社会の形成に寄与することを使命とする。」
と規定されています。

また、同法第2条(職責)には、
「司法書士は、常に品位を保持し、
業務に関する法令及び実務に精通して、
公正かつ誠実にその業務を行わなければならない。」
と規定されています。

が、「法令に精通する」とは、言うは易しです。
法令は数えだしたらキリがない程存在し、
新たにできるものもあれば、
改正されるもの、なくなるものもあります。
それらの一つ一つを、日々の業務を行いながら、
「実務に精通」しつつ追いかけ続け、学び続けることは、
とても大変なことであります。
が、仕事なので仕方がありませぬ。

本ブログでは、ここから先、
主に「変わっていく法令」について
扱っていくこととします。

今回は、令和3年4月21日に成立し、
同月28日に公布された
「民法等の一部を改正する法律」(令和3年法律第24号)及び
「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」(令和3年法律第25号)
(上記をまとめて「所有権不明土地関連法」といいます。)について、
令和4年12月14日、施行期日を定める政令が閣議決定されましたので、
その中の一部、不動産登記制度の変更に係る部分に絞って
触れることとします。

「誰の不動産か不明」を防ぐ!

所有権不明土地関連法の立法趣旨は、
当該不動産の所有者が誰なのかが分からなくなる事態の発生を予防することと、
当該不動産を利用しやすくする、ということです。

以下で少し詳しく見ていきます。

相続登記の申請義務化

相続を原因とする不動産登記(相続登記)の
申請が義務化されます。

不動産に係る所有権等の権利については、
登記しなければ第三者に主張することができません。
つまり、登記は「私人の権利のため」にするものなので、
登記しないことによって当該私人が不利益を被っても
国は関知しません、ゆえに登記は義務ではありません、
というのが、これまでの建てつけでした。

しかし、そのスタンスを続けることで、
例えば地方の農地や山林、建て替えられない建物とその底地(宅地)等、
売買等の流通に支障を来す不動産については、
相続が発生しても放置(登記しなきゃいけないんじゃないのなら、登記しない)するケースが増加し、
平成29年の国交省調査では国土の22%が所有者不明土地、
そのうち66%が相続登記の未了を原因とするまでになってしまいました。

その結果、近年マスコミを賑わしている「空き家問題」等の問題が顕在化し、
相続登記を義務化しなければ、という話になっていったのです。

令和6年4月1日から、
不動産を取得した相続人に対して、その取得を知った日から
3年以内に相続登記の申請をしなければならなくなります。
そして、正当な理由なく申請しなかった場合
(面倒だから、メリットが無いから、お金がかかるから等の理由は、
正当な理由になりません・・・)、
10万円以下の過料に処せられます。

手続面と費用面の負担を権限

相続登記なんて勝手が分からないのに、
3年超放置すると過料に処される可能性があるの!?
と思われる方もいらっしゃることでしょう。

そこで、手続面での負担を軽減するため、
相続人申告登記という制度が新設されます。

ある不動産を誰が相続するのかが決まらず、
相続登記できない状況にあったとしても、上記新制度を活用し、
自身が、現在登記されている名義人の法定相続人である旨を申告(単独でもできます)
すれば、とりあえず申請義務を履行したことになり、
その方には過料がかからなくなります。

なお、登記官は、
申告した方の住所と氏名を職権で登記しますが、
法定相続分(持分)は登記されません。

次に、費用面での負担軽減策として、
固定資産評価額100万円以下の不動産については、
所有権移転登記や表題部所有者の相続人が所有権保存登記(要するに相続登記)を
申請する場合、登録免許税(登記申請をする際に貼付する収入印紙代)が
非課税になります(租税特別措置法第84条の2の3第2項)。

住所変更登記の義務化

所有者不明土地問題で、
相続登記と並んで課題とされてきたのが、住所変更登記未了問題です。

登記記録には住所も記載されているのですが、
当該名義人が住所移転しても、住所変更登記(詳細は前のブログを参照)していないために
何か問題があってもどこに連絡をしていいのか分からない、
という課題がありました。

そこで、登記名義人に対して、
住所等(氏名・名称も含む)の変更日から
2年以内に変更登記をすることが義務となり、
正当な理由なく登記申請義務を怠った場合には、
過料5万円以下に処されることとなりました。
但し、その施行日については、現在定まっておりません。

これにも負担軽減策あり!

住所等変更登記が義務化されることに伴って、
法人でない自然人(「ヒト」です。)が住所等の変更登記を申請する場合、
住所、氏名、生年月日等の検索用情報の申出を行うことで、
登記官が変更登記をしてくれ、非課税になるようになります。

また、法人の場合には、
法人が自己名義の不動産について会社法人等番号を登記事項に追加すれば、
本店や商号等の変更登記(商業・法人登記)をすると、
法務局内の不動産登記システムにも変更情報が通知され、
やはり登記官が変更登記をしてくれるようになります(非課税)。

今回はここまで

冒頭で、所有権不明土地関連法の立法趣旨が、
当該不動産の所有者が誰なのかが分からなくなる事態の発生を予防することと、
当該不動産を利用しやすくすることである、と書きました。

今回ご紹介した不動産登記制度の変更は、
「発生予防」に関するものでしたが、
所有権不明土地関連法には、
上記の他にも「発生予防」に関する制度が新設されており、
不動産を利用しやすくするための規定も存在します。

それらについては、次回以降、お話しします。

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