ブログ 町の法律日記

地番と家屋番号ってナンだ!?

地番とは何か

土地を数える際に使用する単位を「筆(ふで)」といいますが、
日本の領土内には、数えきれない程の「筆」が存在します。
見た目には、例えば本州(離島を除く)は地続きゆえに1筆の土地のようにも見えますが、
実際には何筆もの土地が折り重ならずに繋がって成り立っています。
しかし、土地の境界線(「筆界線」といいます。)は、元々目に見えないものですから、
「あの山は1筆でなく3筆で成り立っている」と言われても、
「は?」となってしまいます。

地目が「宅地」の土地の場合、一筆の土地の筆界線上にブロック塀のような囲障があれば、
一筆の土地の形状を視認できることもありますが、
実は数筆の土地をグルッと塀で囲ってあったなら、見た目にはそこに何筆の土地があるのか、
やっぱり、さっぱり分かりません(そのための境界標を打つんですけれどね・・・)。

土地は不動産ですが、原則的に一筆一筆、所有者が存在しており、
どの土地の所有者が誰なのか等が、登記によって公示されています。
そして、その土地が「どの土地」なのかを特定するために使用されているのが、
「地番」な訳です。

地番は、市、区、町、村、字またはこれに準ずる地域をもって定められた
「地番区域」ごとに振られるものであり(登記官が職権で付番します)、
それによって、他の土地が入り交じることを防ぎ、
土地の個別性を明確にする(判例)ことを可能にしています。

なお、地番は、同じ地番区域内においては、
他の土地と同じ地番を付けられることはありません。
例えば、「A市ぽんぽん町二丁目」という地番区域内に、
「31番」という地番は1つしかありません。
が、「A市ぽんぽん町三丁目」には、「31番」は存在することがあります。

また、過去のブログ記事で紹介した土地合筆(複数の筆を一筆にまとめる)のような場合、
例えば「A市ぽんぽん町二丁目2番の土地」と
それに隣接する「A市ぽんぽん町二丁目3番の土地」を合筆し、
「A市ぽんぽん町二丁目2番の土地」1筆にした場合、3番の土地は無くなりますが、
以後、その地番区域内において3番の土地は二度と現れません。
地番は、原則として再使用されないのです。
3番は永久欠番になるのであります(ジャイアンツファンではありません。タイガースファンです)。

では、土地合筆の逆で、土地分筆(1筆を複数の筆に分ける)をした場合はどうか。
例えば、「A市ぽんぽん町二丁目31番の土地」を3筆に分けた場合、
新たにできる3筆の土地は、
「A市ぽんぽん町二丁目31番1の土地」と、
「A市ぽんぽん町二丁目31番2の土地」と、
「A市ぽんぽん町二丁目31番3の土地」になる、
つまり、地番は「31番1」、「31番2」、「31番3」となります。

ここで注意が必要なのは、
「地番」と「住所(住居表示)」は同一ではない、ということです。
よく混同する方がいらっしゃるのですが、
地番を付けるのは登記官で法務省管轄であるのに対し、
住所(住居表示)は自治体、総務省管轄であるため、
まさに縦割り行政全開で、違う概念のものです。

ゆえに、例えば住所が「A市ぺんぺん三丁目2番1号」だからといって、
地番も「2番1」なのかと思ったらさにあらず、
同じということもありますが、地番は「4321番1」とか、全く違うものだったりします。

もっと言うと、「A市ぷんぷん1001番の畑(※実際に耕作されている農地)」があった場合、
住所は存在しません。
地番は「1001番」で存在するのですが(土地があれば地番もある)、
人が住んでいない農地であるため、住所は存在しない訳です。

地番と住所は別物、という好個の例ですね。

家屋番号とは何ぞや?

地番は、住所と混同する方がいらっしゃるくらいですから、
まだイメージしやすいと言えるかもしれませんが、
「家屋番号」というものを認識して人生を送っているという一般の方は、
まずいらっしゃらないでしょう。

しかし、土地に「地番」がある(一部の道等を除く。)ように、
建物も不動産ですから、「家屋番号」があるのです。
家屋番号が無い建物は、例外無く、その建物を登記していない、
ということになります。
建物を登記することによって、登記官が家屋番号を付するからです。

この家屋番号、地番と比べて若干ややこしいものです。
建物1個ごとに付されるのですが、
ここでいう「建物1個」とは、主である建物(俗にいう「母屋」)のことを指します。
建物の登記記録には、どこにその建物が存在するのかを示す「所在」という欄がありますが、
同じ所在(例えば「A市ぽんぽん町二丁目31番地」※建物の所在欄では、「31番」でなく
「31番地」と記載されます。)の中に複数の建物(居宅と物置)がある場合、
それぞれを主である建物として扱うと、
居宅の家屋番号は「31番の1」、
物置の家屋番号は「31番の2」となったりします。
「の」を入れているのは、気まぐれではありません。
あくまで所在の地番は「31番」ですので、
家屋番号を「31番1」と「31番2」としてしまっては、
所在地番が「31番1」と「31番2」なのかと勘違いしてしまいかねないため、
「の」が入るのです。
家屋番号は、対象建物の敷地の地番と揃えるのが原則であるため、
このような苦肉の策として「の」が編み出されました。
なお、住所にも「10番地2」とあったり「10番地の2」とあったりしますが、
住所の「の」と家屋番号で使用される「の」は全く意味合いが異なりますので悪しからず。

一方で、居宅を主である建物(母屋)、物置を附属建物として扱う場合、
物理的には建物は2個ですが、法的には1個の建物として扱い、
主である建物にのみ家屋番号が付され、
附属建物は登記記録上主である建物の記録の下に表れるのみとなり、
家屋番号の代わりに「符号」というものが付されます。
符号1 物置
という、何とも哀愁漂う響きです。

附属建物(従物)は、主である建物(主物)の売却等処分に従うのみの存在となり、
独立して取引の対象等にはならなくなってしまうのです。

次に、地番と家屋番号で決定的に使いが異なる点について。
地番は、先述のとおり、一度無くなってしまうと再使用できなくなります。
永久欠番です。
しかし、家屋番号は、節操なく何度でも再使用できます。
例えば、家屋番号3番の建物を取壊して滅失登記を経由すると、
家屋番号3番は無くなります。
その後、同一所在地に建物を新築した場合、
その家屋番号を3番とすることができるのです。

例えるなら、地番3番は長嶋茂雄さん(ジャイアンツ)の3番、
家屋番号3番は清原和博さん(ライオンズ)の3番です。
現在、ライオンズの3番は山川穂高選手が付けていますが、
清原さんの後は玉野宏昌さんが付けたりしました。
なんのこっちゃ。

お口直しに、附属建物に付される符号についても触れておきます。
符号は、家屋番号と異なり、再使用することができません。
地番と同じです。
符号の面目躍如といったところでしょう!

地番と家屋番号を知ることで見えてくるもの

タイトルで謳うほど大したことではないのですが、
地番と家屋番号というものが何なのかを知っていると、
それぞれの不動産の歴史のようなものが見えてきたりします。

枝番(例えば地番が「10番2」なら「2」が枝番)が付いた地番であれば、
ああ、この土地は元々10番の土地の一部だったんだな、
ということは、10番1の土地の所有者とかその先祖が
10番2の土地の所有者でもあったのかな、とか、
「10番1」、「10番2」、「10番4」、「10番8」の地番があるのに、
「10番3」、「10番5」~「10番7」の地番が見当たらなければ、
ああ、過去に合筆されて無くなったんだな、といったことが分かります。

家屋番号でも、原則として敷地の地番と同じ番号が振られるものなのに、
所在欄が「A市ぽこぽこ町二丁目1020番地1」であるのに対して、
家屋番号が「3番」となっていれば、
ああ、昔々は、所在の地番が3番だったのかな?
とノスタルジックな気分にどっぷりと浸かることができるというものです。

結びに、地番と家屋番号の併せ技を一つ。

所在「A市ぽんぽん町二丁目31番地」の土地の上に建物を新築した場合、
原則的に当該建物の家屋番号は31番になります。
しかし、「A市ぽんぽん町二丁目3番地」と「A市ぽんぽん町二丁目31番地」の
2筆の土地の上に跨って建物が存在する場合、家屋番号はどうなるのか?

この場合、当該建物の床面積の多い部分に存する敷地の地番と同一の番号が付されます。
即ち、当該建物が「A市ぽんぽん町二丁目3番」より
「A市ぽんぽん町二丁目31番」の方により多く床面積が存する場合、
家屋番号は31番になるのです。

そして、建物の登記記録上の所在欄には、
「A市ぽんぽん町二丁目31番地、3番地」と記載されます。
地番の早い方から記載されるのでなく、
当該建物が主として存在する土地の地番が優先的に記載されます。

こういうルールを知っていると、
また一つ、登記記録を見ただけで、
対象不動産の様子を何となく察することができるようになります。

今回は、不動産登記にまつわる番号のお話でした。

CONTACT
お問合わせ

司法書士 土地家屋調査士 行政書士 おがわ町総合法務事務所へのお問合わせは、
電話、メールのいずれからでも受け付けております。
お気軽にどうぞ。