ブログ 町の法律日記

ちょっと悩む課税価格

不動産の「評価額」は毎年4月に更新!

今回は、不動産登記のうち権利に関する登記(以下、「権利登記」)をするうえで避けては通れない、
課税価格の算定についてご紹介します。

「課税価格」とは、申請する権利登記の対象となっている不動産の固定資産評価額のことです。
ここで言う「固定資産評価額」とは、
実社会において取引される際の不動産の適正価格(以下、「実勢価格」)のことでなく、
自治体において固定資産税・都市計画税を算定する際の基準として評価された額のことを言います。
なお、上記「固定資産評価額」は、基本的に「実勢価格」より安く設定されています。

例えばA地を所有するXさんが、Yさんに贈与するとします。

このA地、登記記録上の地目(以下、「登記地目」)は「畑」ですが、
Xさんは全く農業をしないために、実際の地目(以下、「課税地目」)が雑種地だったとします。
そして、A地は市街化区域(どんどん農地以外の土地にして使用してね~というエリア)にあるとします。

このA地をYさんに贈与する場合、
原因を贈与として権利登記(所有権移転登記)をすることになりますが、
当該申請をするにあたって、「課税価格」というものを算定したうえで、
それを基に「登録免許税」を算定し、
当該税額を権利登記の申請時に管轄法務局に納めることになります。

「それの何が悩ましいの?」と思われるかもしれません。
しかし、今回いくつかの課税価格の算定方法について触れますが、
意外と奥が深い(?)ものなのです。

上記の例で、XさんがA地の権利登記をする際に添付することとなる
固定資産評価証明書(※添付不要の地域もあります。)を管轄自治体で取得したとします。
上記証明書は、登記申請をする時の年度のものを取得するのですが、
そこには、A地の登記地目が畑、課税地目が雑種地と記載されており、
評価額が500万円と記載されていたとします。

一般的に、農地の固定資産評価額が500万円ということは、まずありません。
ゆえに、この500万円は、
課税地目である雑種地の価格として記載されている、ということになります。

そうであるならば、たとえ農地として登記されている不動産であっても、
権利登記を申請する際の課税価格は(雑種地としての)金500万円となり、
それに基づく登録免許税は10万円となります(結構お高いでしょ?)。

しかし、例えばA地の登記地目が畑であり、
実際にXさんがA地で作付をしていたため課税地目も畑だったのですが、
当該土地を駐車場に変え、登記地目を雑種地に変える地目変更登記をしたうえで、
その年内にYさんに駐車場として贈与したとします。

固定資産評価額は、年に一度、年度初めの4月1日にしか更新されません。
ゆえに、この場合に固定資産評価証明書を取得しても、内容は更新されておらず、
登記地目も課税地目も畑と記載されており、評価額が5万円、と記載されていた・・・
という場合の課税価格は、いくらになるのか?

上記のようなケースでは、自治体の担当者に、
固定資産評価証明書の備考欄に近傍雑種地価格を記載してもらって、
その記載された単価を基に課税価格を算定し、登録免許税を求める、
ということになります。

なお、農地を雑種地でなく宅地に変えて地目変更登記をした場合、
農地の地積には小数点以下(第2位まで)が記載されていないため、
自治体の担当者に、固定資産評価証明書の備考欄に近傍宅地額を記載してもらったうえで、
地目変更後に登記された地積(小数第2位まで記載されています。)に基づき、
課税価格・登録免許税額を算定することになります。

その他、登記地目が「宅地」で課税地目が「公衆用道路」だった場合、
課税価格はどうなるか・・・?

答えは、公衆用道路として課税価格を算出することになります。
しかし、課税地目が公衆用道路の場合、固定資産評価証明書に評価額が記載されておりません。
では、どうするのか・・・と、キリがないので、土地についてはこの辺で終わりにします。

少しややこしくなってきましたね。
こういったケースは序の口であり、他にもいろいろなケースがあります。
以下、建物についても、いくつかの課税価格の算定方法を例示します。

区分建物の課税価格

区分建物(マンション等)の課税価格を算定するうえで、
少し厄介な例(しかも、よくある。)を挙げるすれば、
規約共用部分の扱いでしょう。

規約共用部分とは、居宅用として販売される区分建物(専有部分)ではないけれど、
上記以外にマンション内に所有権の対象となりうる専有部分等がある場合に、
マンションの規約で、当該マンションに居住する人達の共有部分としましょう、
と定めたものを言います。
例えば、管理人室や集会所、附属のゴミ置き場(独立した建物であっても。)等があります。

区分建物を購入する場合、「そのマンション(区分建物)を買った」という印象が強いと思われますが、
実際は、区分建物だけを買ったのでなく、
そのマンションの敷地の持分も併せて購入していることが多くあります。
この場合、所有権という種類の敷地権(建物と分離して処分することはできない。)も買っている、
ということなのですが、話が脇道に逸れてなおかつ少々複雑な話になるので、
敷地権の説明は割愛します。

敷地権は、原則的に専有部分の床面積割合で共有するものなのですが、
上述の規約共用部分の持分割合が、上記の敷地権の割合と異なることがあります。
なお、敷地権の割合は登記されているため明白ですが、
規約共用部分の持分割合は登記されていません。
では、何を調べれば分かるのか?
それは、多くの場合、先述の固定資産評価証明書の備考欄に記載されている内容を調べます。

区分建物の権利登記をする際、当該区分建物の固定資産評価額の他に、
全ての規約共用部分の評価額(評価証明書の備考欄に記載された割合を援用)と、
敷地権の種類が所有権である場合、敷地の固定資産評価額(登記された敷地権の割合を援用)を基に
課税価格を算定し、登録免許税額をはじき出します。

この記事、面白いかな・・・。
めげずに進めます。

普通建物の課税価格

マンションでなく、普通の一軒家等の建物であっても、
課税価格の算定が悩ましいケースが多々あります。
というか、普通建物こそ、色々と検討しなければならないことが多いと言えます。

不動産(土地・建物)について、
どこにあって、どういう目的の不動産で、どのくらいの面積があるのか、
という客観的な事項を登記する表示登記は、以前このブログでもご紹介したとおり、
発生・変更・消滅があった日から1か月以内に登記することが義務になっています。

しかし、実社会においては、上記の表示登記が必要になっても、
例えば建物を建てたけれど登記をしていない、
建物を建てた際には登記したけれど、その後増築した。
でも、増築したことについては登記していない、
といったケースはものすごく多くあります。

こうなると、当該不動産の情報が、
登記記録(そもそも無い場合あり)と実際(現況)とで差異が生じたり、
はたまた、登記記録と現況が合致しているのに、
固定資産評価証明書の記載内容との間に齟齬が生じていたりして、
権利登記の課税価格はどのように算定するのか・・・
という問題にぶち当たります。

なお、固定資産税・都市計画税は、自治体側からすると「欲しいもの」ですので、
登記されていようがいまいが、そこに不動産(固定資産)があるのだから、
税金を徴収するために独自に調査し、
「実態はこうだ」という評価をして課税していますので、
固定資産評価証明書を取得することはできます。
が、登記されていないので、その所有者は、「税金を納めているんだから、自分のものだ!」と
第三者に主張することはできません。
権利の主張は、登記しなければできないことが民法に定められているからです。
ですから、例えば当該不動産を売却等処分する際には、
登記していなければできないことになります。

ともあれ、上述のように登記記録・現況・固定資産評価証明書の記載内容の間に
不一致が生じている場合、課税価格はどう算定するのか?

例えば、建物Aがあります。
Aは、当初延べ床面積70平米で新築したのですが、表示登記をせず、
10年後、15平米を増築したとします。
そのタイミングで、Aの表示登記(建物表題登記)をした場合、
延べ床面積は85平米となります。

しかし、固定資産評価証明書を取得すると、
Aの延べ床面積が72平米、評価額200万円と記載されており、
増築部分は何ら記載されていなかった。
このような場合、登記記録と現況は一致していますが、
評価書の記載内容と齟齬があることになります。

では、A建物の課税価格はどのように算出するのか?

ここでは、72平米200万円を新築部分とし、
13平米(85平米-72平米=13平米)を増築部分として計算します。
なお、増築部分の評価額は、経年減価補正率というものを使って計算することになりますが、
管轄の法務局によって算出される評価額が異なってくるので注意が必要です。

まとめ

以上、いくつかの例を挙げてご紹介したように、
主に不動産の権利登記をするにあたって算出すべき
課税価格の計算は、一筋縄ではいかないケースが結構あります。

結局、困った時は固定資産評価証明書の課税地目等を尊重すべき、
ということなのかというと、そういう訳でもなく・・・。

例えば、土地の地目が「宅地」と登記されている一方で、
評価書には現況が「その他」と記載されている場合。
「その他」では、現況(課税)地目が雑種地とも言えないため、
宅地として計算することになったりします。

たかが課税価格、されど課税価格。
だから何だ、と言われればそれまでなので、
今回はこの辺で失礼します!

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