ブログ 町の法律日記

法定利率、七変化?(後編)

中間利息の控除

前回は、法定利率と約定利率、
約定利率が固定制から変動制になったこと、
商事利率が廃止されたことについて触れました。

今回は、新設規定(と言っても改正前の判例を明文化したもの)
「中間利息の控除」について触れるとともに、
おまけとして「利率の上限」についても述べていきます。

まず、「中間利息の控除」について。

「中間利息」と言われても、
何のことかよく分かりませんよね。
分かる人は、それを日常的に扱っている職業の人か、
法学を専攻している学生さんか、
法律マニアさんくらいに限られるかもしれません。

中間利息の控除については、
例を挙げて説明した方がイメージしやすいでしょう。

つまり、私のウデ次第、といったところでしょうか。

例えば、こんなケース。

私が交通事故に遭ったとして、その後遺症によって
今の仕事ができなくなったとします。

「司法書士 土地家屋調査士 行政書士 おがわ町総合法務事務所」
閉店ガラガラです。

そうすると、事故発生以降、
現在の仕事ができなくなるであろう年齢までの期間に
私が得られる筈だった利益、
これを「逸失利益」とか「得べかりし利益」と言いますが、
それを得られなくなった「損害」を賠償するよう
私は加害者に請求することになるでしょう。

それだけでなく、医療費等の費用だって
交通事故が無ければ負担することがなかった訳ですから、
上記の損害と併せて加害者に請求することになるでしょう。

否、「でしょう」じゃなくて、
絶対に請求します。

で、その逸失利益(例えば20年間)と
費用の総額(例えば20年間)が
1億円だったとします。

う~む。
安いとも高いとも言えない絶妙な金額設定ですな。
さすがであります。

ともあれ、その1億円を加害者に請求したとして、
加害者側がすぐに「はいよ」と一括で
1億円を支払ったとします。

払えるのは保険会社くらいですね。
自動車を運転する人は、任意保険に加入しましょうね!

で、私もまさか、そんな大金を
現金で保管しておくような
物騒なことはしない訳です。

金融機関口座に預貯金するか、
はたまたNISAの原資にするか、
株式を購入して利益を膨らませようとするか、
不動産に投資するか、
手堅く「金(ゴールドね)」を買って
後日売却、利益が出てうっしっし・・・。

いろんな管理・運用をすることができますよね。

そうすると、ですよ。
私の損害額は1億円なんですが、
預金しておくだけだとしても、20年も預けておけば
超低金利でも利息は最低限年0.001%以上付くと考えられるので、
1年で最低10万円が増え、それが元金1億円に組み入れられて、
次の年は1億10万円の0.001%ですから利息は10万100円で、
1億20万100円になり・・・。

というように、預入れっぱなしで
お金を使わなかった場合、
1億円より多くなる、
言い換えると、私は1億円以上の額を
受け取ったようなものになる訳です。

それは如何なもの?ということで、
将来において取得すべき利益や負担すべき費用について
損害賠償の額を定める場合には、
その利益を取得すべき時、費用を負担すべき時までの利息相当額、
これを「中間利息」と言うのですが、
それを予め控除しましょう、その方が公平ですよね?
というもの、これが「中間利息の控除」です。

で、中間利息の利率は、
損害賠償請求権が生じた時点における法定利率となります。
本件では、私が交通事故に遭った時点における法定利率年3%を用いて
20年間の利息相当額を算出し、
その額を損害額から除く、
ということになります。

法定利率が変動制であったとしても、
事故発生時点の利率が適用されますから、
改正前に事故にあったケース(法定利率5%)より
改正後のケース(同3%)の方が
控除額が少なくなる・・・。

結果、以前より多くの賠償金を受け取れる可能性がある、
ということになります。

保険会社は大変だぁ・・・。
ていうか、年々保険料が上がっている気がするのは
そのためだろうか・・・?

【おまけ】利率の上限

ここからは、利率に関する話ではあるものの
別に改正された訳でないものについて、
ついでに述べていきます。

前回のコラムで、
「法定利率より約定利率の方が高くても約定利率が適用されますが、
これについては、一定の制限があります。」
と書きました。

これをちょっと深く掘り下げると、
法定利率(改正後は年3%)と約定利率で、
利率が異なるときは、利率の高い方を用います。

約定利率が年1%なら法定利率を、
約定利率が年5%なら約定利率を用いる訳で、
これは遅延損害金についても適用されます。

例えば、私が親友に100万円を、
1年後に返済してもらうこととして、
親友であるがゆえに(?)
返してくれなかったときの遅延損害金を年2%として
金銭消費貸借契約を締結。
100万円を貸渡したとします。

で、「貸したら返ってこないものと思え」じゃないですが、
全くお金を返してもらえなかった、と。

金の切れ目が縁の切れ目。

私が親友を相手に貸金返還請求訴訟を起こすのであれば、
遅延損害金の利率が法定利率より年1%低いので、
請求する遅延損害金の利率を
法定利率の年3%として請求することになります。

じゃあ逆に、高い方の利率が適用されるのなら
約定利率をいくらでも高く設定できるのか、というと
そういう訳でないのが「利率の上限」というものです。

いろいろある利率の上限

お金の貸し借りをする契約のことを
「金銭消費貸借契約」
と言います。

金銭消費貸借契約を締結する場合には、
約定利率に一定の制限(上限)が定められていて、
10万円未満の貸し借りの場合だと、年20%まで
10万円以上、100万円未満なら、年18%まで
100万円以上(本件はこれ)なら、年15%まで
となっています。

で、遅延損害金の約定利率は、
上記利率の1.46倍まで、となっています。

本件であれば、遅延損害金は年21.9%(15%の1.46倍)までです。
9万円の貸し借りであれば、年29.2%までです。

しかし、私と友人との間におけるお金の貸し借りでなく、
貸す側がお金の貸し借りを業とする者、
例えば金融機関や消費者金融(但し、キャッシング)の場合、
「営業的」という扱いで、
遅延損害金の上限は年20%になります。

事業者でない者同士でのお金の貸し借りならともかく、
消費者と事業者の間で貸し借りをする場合、
消費者と事業者とでは情報の格差等が圧倒的であり、
事業者が優位にあると言えます。

そこで、遅延損害金の上限も低めに設定されているんですね。

さらに、消費者と事業者との間で
売買等の消費者契約(ショッピング等)を締結した場合、
上記の遅延損害金年20%の上限は適用されず、
年14.6%が上限となります。

如何でしょうか。
一言で「利率」といっても、
さまざまな制限があるもんですね。

覚えるのも面倒ですから、
「へ~、いろいろあるんだなあ」
くらいに認識していただけたら幸いでございます。

今回は、このへんで。

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