不動産登記は司法書士の中核業務
皆さん、こんにちは。
埼玉県比企郡小川町で司法書士・土地家屋調査士・行政書士をしている達脇清将(たつわき・きよまさ)です。
今回は、前回に引き続き、司法書士業務の内容紹介第3弾、「不動産登記業務」についてご紹介します。
不動産登記業務は、これまでご紹介した「裁判書類作成業務」や「簡裁代理業務」と比べると、司法書士の業務であることを知っていらっしゃる方が少なくありません。それどころか、「司法書士は不動産登記のみを扱っている人」というイメージをお持ちの方が相当数いらっしゃるようにも思えます。さすがに不動産登記だけを扱っている訳でないことは既述のとおりですが、そのくらい、不動産登記業務は今も昔も司法書士の中核業務として位置づけられている、と言えます。
埼玉県比企郡小川町で司法書士・土地家屋調査士・行政書士をしている達脇清将(たつわき・きよまさ)です。
今回は、前回に引き続き、司法書士業務の内容紹介第3弾、「不動産登記業務」についてご紹介します。
不動産登記業務は、これまでご紹介した「裁判書類作成業務」や「簡裁代理業務」と比べると、司法書士の業務であることを知っていらっしゃる方が少なくありません。それどころか、「司法書士は不動産登記のみを扱っている人」というイメージをお持ちの方が相当数いらっしゃるようにも思えます。さすがに不動産登記だけを扱っている訳でないことは既述のとおりですが、そのくらい、不動産登記業務は今も昔も司法書士の中核業務として位置づけられている、と言えます。
司法書士業務紹介その3、不動産登記業務
ところで、そもそも「(不動産)登記って何?」という方が非常に多い訳ですが、なぜ、明治から続いている当該制度をご存じない方が多くいらっしゃるのでしょうか。そこから、「司法書士は登記のエキスパート」と言われるくらいですから、要するに司法書士って何をしている人なのか分からない、という疑問に行きつきます。
登記は、大ざっぱに言うと、不動産登記については「民法」と「不動産登記法」、商業登記については「会社法」と「商業登記法」なるものを理解していないと、一体何なのか、その実体が掴めないところに、分かりにくさや取っつきにくさがあります。さらに、一言で「登記」といっても、不動産登記と商業登記ではスタンスからして全く違うものですから、そのボヤ~ンとしたイメージは、一層ボヤけたものになります。
不動産登記とは、不動産(土地・建物)について
(1)現況を公示したり、
(2)権利関係を公示したりするもの。
上記(1)については、土地であれば、どこ(所在)に、どんな種類(地目。宅地、畑、雑種地等)の、どのくらいの面積(地積)の土地(数える単位は「筆」です)があるのかを公示し、建物であれば、どこ(所在)に、どんな種類(居宅、工場、物置等)の、どんな構造(木造、鉄筋コンクリート造等の主要建材、瓦葺、亜鉛メッキ鋼板葺等の屋根の種類、何階建かを明示)の、どのくらいの面積(床面積)の建物(数える単位は「棟」)であるかを公示することで、物件の特定が可能となります。租税を課す資料等に使用するためにも有用なこの不動産登記を「表題(表示)登記」といい、代理申請する資格者は、土地家屋調査士です。なお、私も司法書士であると同時に土地家屋調査士を兼業しています。
そして上記(2)の登記「権利登記」について代理申請するのが司法書士です。上記(2)の登記は、上記(1)で公示された不動産について、どこの誰が、どのような種類の権利(所有権等)を有しているのか、誰がその不動産を担保(抵当権等)に取っているのか等、不動産にかかる権利関係を公示するものです。
例えば、Aさんからある土地をBさんが買った場合、その土地の所有権がAさんからBさんに移転した、という登記を申請します。というか、現段階(令和3年11月25日時点)では、原則的に申請「したほうがいい」という方が正しいニュアンスです。
どういうことなのか?
つまり、不動産登記というものは、上記(1)については課税等の事情により、「登記しなければならない」場合がほとんど(一部例外的な登記あり)ですが、上記(2)については、登記をする義務がないのです(但し、法改正によって、3年以内に相続による不動産登記や住所変更登記、氏名変更登記などは義務になります)。
では、上記(2)の登記をするメリットは何なのか?
それは、先ほどの例でお話しすると、Bさんが「自分に所有権が移転した」という内容の登記を仮に申請せずにいた場合、実態と異なり、登記上は、その土地の所有者は「Aさん」のままになっています。まさに、所有者はBさんでなくAさん・・・ということになっており、Aさんがその状況を奇貨として(下品な言い方をすると「ラッキー!」と考え)、Bさんに売った土地をCさんに売ってしまったとします。しかも、Cさんは、AさんがBさんに土地を売った事実を知っていたとします。それでもCさんは、その土地を欲しかったものですから、何食わぬ顔で自分に所有権が移転した旨の登記を完了してしまった、とします。この場合、その土地の所有権は誰に帰属するのか?・・・倫理上はさておき、ざっくりと原則的に言うと、残念ながら所有者はCさんになってしまうのです。
強烈な違和感を覚える方もいらっしゃることでしょう。しかし、Bさんは、登記しようと思えばその時にできたにも関わらず、敢えて登記しなかった(「登記のことなんか知らなかった」は通りません)訳であり、そのようなBさんは、自分の権利を第三者(Cさん)に主張できないという不利益を被っても仕方ない、というのが、不動産登記制度の考え方なのです。
このように、不動産登記、特に(2)の登記は、現時点では原則的に「しなければならない」ものではありませんが、まず「しておいたほうがいい」ものなのです。その登記の代理申請をする専門家が、司法書士なのです。
結びに、本ページ内で「現段階(令和3年11月25日時点)では、原則的に申請『したほうがいい』」と述べたココロについて触れておきます。
既に述べたように、登記しようと思えばいつでも登記できたのに、それをしなかったことによって不利益を被ったとしても、それは登記しなかった人が甘受すべきというのが、長年にわたる不動産登記制度の根本的な考え方でした。が、それをずっと貫いてきた結果、例えば不動産の所有者が亡くなって相続が開始しても、その相続財産の中に市街化調整区域内の農地(売却したくても都道府県知事の許可が必要で、実質的に売れない農地になってしまっているケースが珍しくありません)があり、相続人がみな都市部で働いているとします。相続人としては、農地を相続しても作付をすることが現実的でなく、さりとて売ることもできない(知事から許可が出ない)とすれば、預貯金債権のみ相続手続をして、うま味の無い不動産の相続手続(不動産登記※俗に「相続登記」といいます)をせずに放置する、という選択をするケースが多発しました。その結果、マスコミを賑わしている所有者不明の「空き家問題」や、「耕作放棄地問題」が顕在化し、国も見過ごすことができない程になってきてしまいました。そこで、令和3年4月の国会で、相続登記や所有者の住所・氏名変更の登記等を義務化する改正法案が可決。3年以内に施行されることになってしまいました。以上の流れを受けて、「現段階(令和3年11月25日時点)では、原則的に申請『したほうがいい』」と表現しました。
次回は、当事務所の「司法書士業務編」その4、商業登記についてご説明します!
登記は、大ざっぱに言うと、不動産登記については「民法」と「不動産登記法」、商業登記については「会社法」と「商業登記法」なるものを理解していないと、一体何なのか、その実体が掴めないところに、分かりにくさや取っつきにくさがあります。さらに、一言で「登記」といっても、不動産登記と商業登記ではスタンスからして全く違うものですから、そのボヤ~ンとしたイメージは、一層ボヤけたものになります。
不動産登記とは、不動産(土地・建物)について
(1)現況を公示したり、
(2)権利関係を公示したりするもの。
上記(1)については、土地であれば、どこ(所在)に、どんな種類(地目。宅地、畑、雑種地等)の、どのくらいの面積(地積)の土地(数える単位は「筆」です)があるのかを公示し、建物であれば、どこ(所在)に、どんな種類(居宅、工場、物置等)の、どんな構造(木造、鉄筋コンクリート造等の主要建材、瓦葺、亜鉛メッキ鋼板葺等の屋根の種類、何階建かを明示)の、どのくらいの面積(床面積)の建物(数える単位は「棟」)であるかを公示することで、物件の特定が可能となります。租税を課す資料等に使用するためにも有用なこの不動産登記を「表題(表示)登記」といい、代理申請する資格者は、土地家屋調査士です。なお、私も司法書士であると同時に土地家屋調査士を兼業しています。
そして上記(2)の登記「権利登記」について代理申請するのが司法書士です。上記(2)の登記は、上記(1)で公示された不動産について、どこの誰が、どのような種類の権利(所有権等)を有しているのか、誰がその不動産を担保(抵当権等)に取っているのか等、不動産にかかる権利関係を公示するものです。
例えば、Aさんからある土地をBさんが買った場合、その土地の所有権がAさんからBさんに移転した、という登記を申請します。というか、現段階(令和3年11月25日時点)では、原則的に申請「したほうがいい」という方が正しいニュアンスです。
どういうことなのか?
つまり、不動産登記というものは、上記(1)については課税等の事情により、「登記しなければならない」場合がほとんど(一部例外的な登記あり)ですが、上記(2)については、登記をする義務がないのです(但し、法改正によって、3年以内に相続による不動産登記や住所変更登記、氏名変更登記などは義務になります)。
では、上記(2)の登記をするメリットは何なのか?
それは、先ほどの例でお話しすると、Bさんが「自分に所有権が移転した」という内容の登記を仮に申請せずにいた場合、実態と異なり、登記上は、その土地の所有者は「Aさん」のままになっています。まさに、所有者はBさんでなくAさん・・・ということになっており、Aさんがその状況を奇貨として(下品な言い方をすると「ラッキー!」と考え)、Bさんに売った土地をCさんに売ってしまったとします。しかも、Cさんは、AさんがBさんに土地を売った事実を知っていたとします。それでもCさんは、その土地を欲しかったものですから、何食わぬ顔で自分に所有権が移転した旨の登記を完了してしまった、とします。この場合、その土地の所有権は誰に帰属するのか?・・・倫理上はさておき、ざっくりと原則的に言うと、残念ながら所有者はCさんになってしまうのです。
強烈な違和感を覚える方もいらっしゃることでしょう。しかし、Bさんは、登記しようと思えばその時にできたにも関わらず、敢えて登記しなかった(「登記のことなんか知らなかった」は通りません)訳であり、そのようなBさんは、自分の権利を第三者(Cさん)に主張できないという不利益を被っても仕方ない、というのが、不動産登記制度の考え方なのです。
このように、不動産登記、特に(2)の登記は、現時点では原則的に「しなければならない」ものではありませんが、まず「しておいたほうがいい」ものなのです。その登記の代理申請をする専門家が、司法書士なのです。
結びに、本ページ内で「現段階(令和3年11月25日時点)では、原則的に申請『したほうがいい』」と述べたココロについて触れておきます。
既に述べたように、登記しようと思えばいつでも登記できたのに、それをしなかったことによって不利益を被ったとしても、それは登記しなかった人が甘受すべきというのが、長年にわたる不動産登記制度の根本的な考え方でした。が、それをずっと貫いてきた結果、例えば不動産の所有者が亡くなって相続が開始しても、その相続財産の中に市街化調整区域内の農地(売却したくても都道府県知事の許可が必要で、実質的に売れない農地になってしまっているケースが珍しくありません)があり、相続人がみな都市部で働いているとします。相続人としては、農地を相続しても作付をすることが現実的でなく、さりとて売ることもできない(知事から許可が出ない)とすれば、預貯金債権のみ相続手続をして、うま味の無い不動産の相続手続(不動産登記※俗に「相続登記」といいます)をせずに放置する、という選択をするケースが多発しました。その結果、マスコミを賑わしている所有者不明の「空き家問題」や、「耕作放棄地問題」が顕在化し、国も見過ごすことができない程になってきてしまいました。そこで、令和3年4月の国会で、相続登記や所有者の住所・氏名変更の登記等を義務化する改正法案が可決。3年以内に施行されることになってしまいました。以上の流れを受けて、「現段階(令和3年11月25日時点)では、原則的に申請『したほうがいい』」と表現しました。
次回は、当事務所の「司法書士業務編」その4、商業登記についてご説明します!