ブログ 町の法律日記

任意後見って何だ!?

「成年後見制度」を補う制度は?

皆さん、こんにちは。
司法書士 土地家屋調査士 行政書士 おがわ町総合法務事務所の達脇です。
今回は、前回本ブログで掲載した当事務所の業務内容紹介の第6弾「司法書士業務編」成年後見等業務の続編として、「任意後見等業務」について説明します。

当事者(以下、「ご本人」といいます。)の判断能力が低下した場合や、精神疾患等により判断能力が先天的に十分でない場合等において、ご本人の権利を擁護し、その方の残存能力を極力活用できるようにするために成年後見、保佐、補助(以下、「成年後見制度」といいます。)の制度が設けられていることは、前回お話ししました。しかし、ご本人の権利擁護等を図る必要がある場合に、ご本人が少なくとも「精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者」(民法第15条第1項)に該当するようにならなければ制度を利用できないというのは不都合、というケースがあります。さらに、成年後見制度を利用すると、法定代理人である成年後見人、保佐人、補助人は管轄家庭裁判所が選任しますので、選任された法定代理人とご本人等の馬が合わない、という残念なケースが発生する可能性もあります。上記のような不具合を補う制度として用意されているのが、任意後見等である、といえます。

いきなり任意後見が開始される訳ではない

任意後見と成年後見(「法定後見」と言い換えます。)の一番大きな違いは、任意後見が、ご本人が自身の後見人になってほしい人を特定し、その人との間で「任意後見契約」を締結するのに対して、法定後見は、ご本人の後見人になる人を管轄家庭裁判所が選任する、という点です。ご本人の希望どおりの人がご本人の身上監護や財産管理等をする訳ですから、それがそのまま任意後見のメリットだ、とも言えます。但し、任意後見は「任意」に後見人を決める契約ですので、ご本人に十分な判断能力がなければできません。
なお、任意後見契約が発効する時期は、契約締結時でなく、その後、ご本人が精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分な状況になった際、任意後見人になる者が家庭裁判所に任意後見監督人の選任の請求をし、家庭裁判所によって任意後見監督人が選任された時、となります。ご本人の自由な意思によって後見人になる者を選べる一方で、その者が後見人としてキチンと業務をできるのか、しているのかをチェックする機能が必要であるため、そのチェック機能を果たす監督人を家庭裁判所が決める訳です。
任意後見人は、契約発効後、同契約において定めた頻度で、任意後見監督人に対して後見事務の報告をすることになります。

任意後見等の一連の流れ

任意後見と成年後見制度について、ご本人の判断能力を基にして時系列的に表すと、以下のようになります。
(1)継続的見守り契約(ご本人の判断能力が十分な時期)※詳細は後述

(2)財産管理等委任契約(ご本人の判断能力が十分な時期)※詳細は後述

(3)任意後見契約(ご本人が精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分な状況になった時)

(4)必要とあらば、死後事務委任契約(ご本人が亡くなった時)※詳細は後述

なお、最初からご本人が精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分な状況である場合は、(1)~(4)の契約はできませんので、ご本人の判断能力の程度に応じて、家庭裁判所に対して成年後見、保佐、補助の開始申立てをすることになります。

継続的見守り契約

委任者(ご本人)と受任者(将来的に任意後見人になる見込みの者)との間で締結する契約です。ご本人の判断能力が十分であることはもちろん、ご本人が自分で自分の財産を管理し、各種手続も自力でできる時期が、この契約の対象となる期間です。ご本人と受任者は、定期的に連絡等をとって意思疎通を確保し、受任者はご本人の生活状況や健康状態の把握に努めます。

財産管理等委任契約

委任者(ご本人)と受任者(将来的に任意後見人になる見込みの者)との間で締結する契約です。ご本人の判断能力は十分なのですが、例えば施設に入所する等の事情により、ご本人が自身で財産を管理することが困難になった場合等に、受任者がご本人の生活、療養看護及び財産管理に関する事務を行います。なお、本契約の効力が発生する時期は、ご本人と受任者が、本契約とは別に、書面で開始の合意をした時とするのが一般的だと言えます。

死後事務委任契約

委任者(ご本人)と受任者(将来的に任意後見人になる見込みの者)との間で締結する契約です。この契約が発効するのは、ご本人がお亡くなりになった時であり、ご本人の死後、委任者の立場はご本人の相続人が承継します。ご本人が死後に自らの財産の分割方法を指定する場合、遺言制度を活用することになりますが、遺言では指定できない(指定したとしても法的拘束力が無い)事項がある場合に、本契約を締結することがあります。例えば、自らの葬儀の内容を指定し、それを受任者にやってもらうこと等が挙げられます。

全ての契約を公正証書により締結する

(1)継続的見守り契約、(2)財産管理等委任契約、(3)任意後見契約、(4)死後事務委任契約は、全てをまとめて公正証書で作成・締結することになりますが、(1)を除いて(2)~(4)のセットで締結することもありますし、(2)と(3)のみの契約ということもあります。どのような契約を締結するかは、ご本人と受任者の間でよく話し合い、その事案において最適と思われる内容を考え、決定することになります。

以上が、任意後見等業務についての大まかな説明になります。皆様、よいお年を!

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