ブログ 町の法律日記

チョージョが東大に合格したら?

いろいろある「条件」

本年も宜しくお願い致します。

年が改まり、受験シーズンに突入しました。

私のチョージョも高校受験が佳境を迎え、
「頑張っているなぁ」と思う程に頑張っております。

そんな新年一発目のお題は、
令和2年4月1日から施行された改正民法のうち、
「条件」にスポットを当てて述べていきましょう。

法律行為をする際、いろいろな条件を設定することがあります。

民法では、第126条(条件が成就した場合の効果)から
第134条(随意条件)までに規定されていますが、
そもそも「条件」って何でしょう?

「条件」とは、
法律行為の発生や消滅を
将来の不確定な事実が成就するか否かに
かからしめることを言い、
さまざまな種類の「条件」があります。

よく用いられるものとして、
条件が成就することで、
法律行為の効果が発生する条件(=停止条件)や、
逆に、条件が成就することで、
法律行為の効果が消滅する条件(=解除条件)があります。

上記の2種類の条件に、
「既成条件」というものを組み合わせたりします。

既成条件とは、当事者が知っているかは関係なく、
条件の成就又は不成就が確定している場合のことを言います。
停止条件が既に成就している場合は無条件、
解除条件が既に成就している場合は無効になります。

例えば・・・
停止条件が、(既に中3の)チョージョが人類が中学校に入ったら10万円あげる、
という場合。
既に停止条件が成就しているため、「無条件」に10万円あげることになります。

解除条件の場合は、チョージョが中学校に入ったら10万円返せ、
というものになり、これは無効になります。

これに対し、停止条件の不成就が既に確定している場合、
その法律行為は無効であり、
解除条件の不成就が既に確定している場合は、
その法律行為は無条件になります。

ちょっと例題を挙げますので、考えてみましょう。

チョージョが第1志望の高校に入学したら、100万円あげる
と条件を付けたものの、既に第1志望校に合格している場合は?

答えは無条件、です。

チョージョが第1志望の高校に入学したら、100万円返せ
と条件を付けたものの、既に第1志望校に合格している場合は?

答えは無効、です。

チョージョが第1志望の高校に入学したら、100万円あげる
と条件を付けたものの、既に第1志望校は不合格だった・・・場合は!?

答えは無効、です。

チョージョが第1志望の高校に入学したら、100万円返せ
と条件を付けたものの、既に第1志望校は不合格だった・・・場合は!?

答えは無条件、です・・・。

なんか、縁起でもない感じなので、
この例えはここらで止めましょう。

他の「条件」として、不法条件
というものがあります。

不法条件とは、
条件となる事実の内容を不法な行為をしたり、しないこととするものであり、
こういう条件は無効であります。

例えば・・・
Aさんのお尻を叩いたら、100円あげる(停止条件ですが、無効)
Aさんのお尻を叩いたら、100円返せ(解除条件ですが、無効)

とんでもない話ですから、当然無効でございます。

他のトンデモな条件として、不能条件というものもあります。
不能条件とは、条件となる事実の内容が
「そんなこと、できっこない」という実現不可能なものでして、
チョージョがシベリアンハスキーになれたら、100万円あげる
というようなもの。これは停止条件ですが、無効です。

対して、チョージョがシベリアンハスキーになれたら、100万円返せ
というようなものは解除条件ですが、無条件となります。
要するに、返さなくていい訳ですね。

あとは、「純粋随意条件」なんてものもあります。
条件事実の成否が、一方当事者の意思のみにかかるものを言うのですが、
例えば、私が
「チョージョよ、ダディがその気になったら、1万円あげよう」
と言う場合、停止条件が私の意思のみに委ねられている訳ですが、
これは無効になります。

逆に、私が
「ワイフ~。お小遣いが少ないから、
私が必要だと思う時に、1万円ちょうだい(又は『あの時の1万円返して』)」
と言った場合、解除条件が私の意思のみに委ねられております。

このように、条件の成就が解除条件になっている時や
債権者の意思のみにかかるときは、
「有効」になりますので、注意が必要です。

以上がざっくりと、いろいろある「条件」の説明になります。

ちなみに、司法書士が日常的に関わる不動産登記の世界では、
「停止条件」が出番の多い「条件」と言えます。
不動産が市街化調整区域内にある農地の場合、
停止条件付の登記をすることになるのですが、
今回のテーマから話が逸れていきそうなので、
またの機会に、ということで。

条件の改正点

さて、ここからは
民法の改正点についてです。

民法第130条は、従前は
条件が成就することで不利益を受ける当事者が、
故意に当該条件の成就を妨げた場合には、
相手方は、当該条件が成就したものと看做せる旨の規定が
あるだけでした。

改正法では、
上記に加え、次の規定が新設されました。

条件が成就することで不利益を受ける当事者が、
不正に当該条件を成就させた場合には、
相手方は、当該条件が成就しなかったものと看做せますよ、と。

まあ、何ということでなく、
判例法理が明文化されただけなのですが、
本来なら成就しなかった筈の条件を
不正な手段でもって成就させた場合は、
成就しなかったものとします、ということです。

例えるなら、
テストで満点とったら好きなものを買ってあげる、という
よくある停止条件付の場合で、
あろうことかカンニング(不正)をして
満点をとった(成就)としても、
満点をとったとは評価できまへん、みたいな。

条件については、「故意」や「不正」がある場合には、
注意が必要ですね。

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