不能による選択債権の特定
金の斧と銀の斧・・・。
大きな葛籠(つずら)と小さな葛籠・・・。
昔話には、含蓄のあるものが少なくありません。
自分だったら、どっちを選ぶか・・・。
そう考えた経験のある人も多いことでしょう。
そう、それは、
幼心にも実生活において
「どちらを選択するか」を決める機会がある
身近な問題として
認識しているからかもしれません。
という訳で、今回は、
令和2年4月1日から施行された改正民法のうち、
「選択債権」というものについてお話しします。
大きな葛籠(つずら)と小さな葛籠・・・。
昔話には、含蓄のあるものが少なくありません。
自分だったら、どっちを選ぶか・・・。
そう考えた経験のある人も多いことでしょう。
そう、それは、
幼心にも実生活において
「どちらを選択するか」を決める機会がある
身近な問題として
認識しているからかもしれません。
という訳で、今回は、
令和2年4月1日から施行された改正民法のうち、
「選択債権」というものについてお話しします。
選択債権とは
ごく身近な問題として、
私、チョージョ、おまけでサンジョを登場人物として、
以下のようなケースを例に挙げます。
ある日、我が家でペットを飼うことになりました。
ペットには癒しの効果がありますし、
みんなノリノリです。
特にチョージョは動物好き。
と言っても、キツネとか、フクロウとか、タカとか、
およそ飼うことが困難なものが大好きなのですが、
現実的に飼えるポピュラーな動物で選ぶなら、
イヌがいい、とのこと。
しかし、サンジョにイヌ・アレルギーがあるため、
飼うことには色々と不都合があります。
一方で、チョージョにはネコ・アレルギーがあるのですが、
例えばサイベリアンという猫種なら、毛にアレルゲンが少ないらしく、
チョージョでも支障ありません。ネコもかなり好きですし。
イヌを飼うとしたら、サンジョはなるべく接触を避けなければなりません。
ネコを飼うとしたら、サイベリアン等、猫種に制限があります。
おまけに、サイベリアンだとしたら、バカ高い!
ともあれ、家族でペットショップに行きました。
我が家の新しい家族を探すべく。
で、我が家の新メンバー候補が以下の2つに絞られました。
(1)かわいいミニチュアダックスフンド
(2)バカ高いサイベリアン
どっちを選ぶか!?
一長一短。
(1)ならチョージョの欲望を満たせますが、
サンジョが触れない等、なんだか気の毒。
(2)なら子らの欲望を満たし、アレルギー問題も解消されますが、
私の懐事情が炎上する。
悩ましい選択です。
そこで私は、どちらにするかの選択権を
家族思いで我が家きってのバランサーである
チョージョに委ねました。
さあ、どっちを選ぶか!!?
と、こういうのが選択債権です。
なお、市販のオレンジジュースとリンゴジュース、
どっちを選ぶ?というのは、
選択債権ではありません。
オレンジジュースにせよ、リンゴジュースにせよ、
市販のものは、別に全く同じメーカーの商品が沢山あるため、
種類債権という類のものになります。
某店で出会った
かわいいミニチュアダックスフンドや
バカ高いサイベリアンは、
同じ犬種、猫種の個体は存在しますが、
「その」ミニチュアダックスフンドや
「その」サイベリアンは、他に存在しない。
そう、唯一無二で、「個性」があり、
替えがきかないものです。
それを選ぶのが、選択債権なのです。
私、チョージョ、おまけでサンジョを登場人物として、
以下のようなケースを例に挙げます。
ある日、我が家でペットを飼うことになりました。
ペットには癒しの効果がありますし、
みんなノリノリです。
特にチョージョは動物好き。
と言っても、キツネとか、フクロウとか、タカとか、
およそ飼うことが困難なものが大好きなのですが、
現実的に飼えるポピュラーな動物で選ぶなら、
イヌがいい、とのこと。
しかし、サンジョにイヌ・アレルギーがあるため、
飼うことには色々と不都合があります。
一方で、チョージョにはネコ・アレルギーがあるのですが、
例えばサイベリアンという猫種なら、毛にアレルゲンが少ないらしく、
チョージョでも支障ありません。ネコもかなり好きですし。
イヌを飼うとしたら、サンジョはなるべく接触を避けなければなりません。
ネコを飼うとしたら、サイベリアン等、猫種に制限があります。
おまけに、サイベリアンだとしたら、バカ高い!
ともあれ、家族でペットショップに行きました。
我が家の新しい家族を探すべく。
で、我が家の新メンバー候補が以下の2つに絞られました。
(1)かわいいミニチュアダックスフンド
(2)バカ高いサイベリアン
どっちを選ぶか!?
一長一短。
(1)ならチョージョの欲望を満たせますが、
サンジョが触れない等、なんだか気の毒。
(2)なら子らの欲望を満たし、アレルギー問題も解消されますが、
私の懐事情が炎上する。
悩ましい選択です。
そこで私は、どちらにするかの選択権を
家族思いで我が家きってのバランサーである
チョージョに委ねました。
さあ、どっちを選ぶか!!?
と、こういうのが選択債権です。
なお、市販のオレンジジュースとリンゴジュース、
どっちを選ぶ?というのは、
選択債権ではありません。
オレンジジュースにせよ、リンゴジュースにせよ、
市販のものは、別に全く同じメーカーの商品が沢山あるため、
種類債権という類のものになります。
某店で出会った
かわいいミニチュアダックスフンドや
バカ高いサイベリアンは、
同じ犬種、猫種の個体は存在しますが、
「その」ミニチュアダックスフンドや
「その」サイベリアンは、他に存在しない。
そう、唯一無二で、「個性」があり、
替えがきかないものです。
それを選ぶのが、選択債権なのです。
旧法の場合
上述の例で、チョージョが一旦検討すると言って帰宅し、
後日、「サイベリアンを飼う」と選択したとします。
さすがバランサーです。
サンジョのことを思い、譲歩してくれました。
譲歩したことで私の懐事情はエラい事になっている訳ですが、
それを気にしないあたりも、さすがです。
しかし、その意思表示を店側にしたとして、
(A)実は、店ではサイベリアンを扱っておらず、サイペリアンという似て非なる雑種を扱っていた場合
(B)引き取るために店に向かっている時にサイベリアンが不慮の死を遂げた場合
(C)店側のミスでサイベリアンが死んでしまった場合
上記(A)から(C)の事態が発生したとしたら、どうなるのか?
いずれの場合も、店側はサイベリアンを
引渡せない(履行できない)、履行不能であることは共通しています。
が、(A)は最初から履行不能(これを「原始的不能」といいます)であり、
(B)と(C)は後発的不能であることに違いがあります。
旧法では、このような選択債権のうち不能なものがある場合、
「債権は、その残存するものについて存在する」と規定されていました。
従って、(A)と(B)の場合、
自動的にミニチュアダックスフンドを選ぶことになる・・・のか!?
(B)はまあ、そうでしょう。
しかし(A)の場合、それってどうなの?となります。
そもそも(A)の場合、原始的不能ですから、
売買契約自体が無効なものとして扱われました。
よって、店側に過失があるなら(本例は十中八九、過失があると言えましょう)、
店側が無効な契約を結んだこと自体に過失責任があるとして、
損害賠償請求をすることができました。
店側に過失が無いときは、条文どおり
ミニチュアダックスフンドになります。
本例ではちょっと考えられませんが。
では、(C)の場合は・・・?
店側に落ち度があるのに、
自動的にミニチュアダックスフンドを選ぶことになるのは
如何なものか、という気がしますね。
この場合、チョージョは
「じゃあ、ミニチュアダックスフンドで」と言うこともできますし、
契約を解除することもできますし、
「いやいや、サイベリアンでしょ!」と言うこともできるます。
サイベリアンを選んだ場合、
店側は履行不能ですので、
チョージョは店側に対して損害を賠償するよう
請求することができちゃいます。
もっとも、例えばサイベリアン専用トイレを既に購入していた等の
損害が発生していればの話ですし、
そういう事情は無いけど、慰謝料を!・・・というのは
まあ、やめておくのが賢明でしょう。
なお、選択権者に過失があって、
店側が履行不能になってしまった場合は、
ミニチュアダックスフンドに特定されます。
後日、「サイベリアンを飼う」と選択したとします。
さすがバランサーです。
サンジョのことを思い、譲歩してくれました。
譲歩したことで私の懐事情はエラい事になっている訳ですが、
それを気にしないあたりも、さすがです。
しかし、その意思表示を店側にしたとして、
(A)実は、店ではサイベリアンを扱っておらず、サイペリアンという似て非なる雑種を扱っていた場合
(B)引き取るために店に向かっている時にサイベリアンが不慮の死を遂げた場合
(C)店側のミスでサイベリアンが死んでしまった場合
上記(A)から(C)の事態が発生したとしたら、どうなるのか?
いずれの場合も、店側はサイベリアンを
引渡せない(履行できない)、履行不能であることは共通しています。
が、(A)は最初から履行不能(これを「原始的不能」といいます)であり、
(B)と(C)は後発的不能であることに違いがあります。
旧法では、このような選択債権のうち不能なものがある場合、
「債権は、その残存するものについて存在する」と規定されていました。
従って、(A)と(B)の場合、
自動的にミニチュアダックスフンドを選ぶことになる・・・のか!?
(B)はまあ、そうでしょう。
しかし(A)の場合、それってどうなの?となります。
そもそも(A)の場合、原始的不能ですから、
売買契約自体が無効なものとして扱われました。
よって、店側に過失があるなら(本例は十中八九、過失があると言えましょう)、
店側が無効な契約を結んだこと自体に過失責任があるとして、
損害賠償請求をすることができました。
店側に過失が無いときは、条文どおり
ミニチュアダックスフンドになります。
本例ではちょっと考えられませんが。
では、(C)の場合は・・・?
店側に落ち度があるのに、
自動的にミニチュアダックスフンドを選ぶことになるのは
如何なものか、という気がしますね。
この場合、チョージョは
「じゃあ、ミニチュアダックスフンドで」と言うこともできますし、
契約を解除することもできますし、
「いやいや、サイベリアンでしょ!」と言うこともできるます。
サイベリアンを選んだ場合、
店側は履行不能ですので、
チョージョは店側に対して損害を賠償するよう
請求することができちゃいます。
もっとも、例えばサイベリアン専用トイレを既に購入していた等の
損害が発生していればの話ですし、
そういう事情は無いけど、慰謝料を!・・・というのは
まあ、やめておくのが賢明でしょう。
なお、選択権者に過失があって、
店側が履行不能になってしまった場合は、
ミニチュアダックスフンドに特定されます。
新旧の条文比較
先程述べた例は、旧法時代のものですが、
どのような条文になっていたかというと、次のとおり。
(旧410条)
債権の目的である給付の中に、
初めから不能であるもの又は後に至って不能となったものがあるときは、
債権は、その残存するものについて存在する。
2 選択権を有しない当事者の過失によって給付が不能となったときは、
前項の規定は、適用しない。
それが、以下のように改正されました。
(改正410条)
債権の目的である給付の中に、
不能なものがある場合において、
その不能が選択権を有する者の過失によるものであるときは、
債権は、その残存するものについて存在する。
どうでしょうか?
原始的不能か、事後的不能かの場合分けがありません。
両者の違いが無くなり、
原始的不能の債権を無効なものとして扱わなくなりました。
するとどうなるか?
こちら側に過失があって
店側がサイベリアンを引渡せなくなった場合は、
ミニチュアダックスフンドに選択が特定される。
これは、旧法と一緒です。
しかし、その他のケースでは、
全て履行不能な債権を選択できることになりました。
要するに、残存債権を選択するなら、それもよし。
履行不能な債権を選択するなら、
履行不能であることの責任を問うて解決しなさい
ということですね。
まあ、しかし、
選択債権は日常的に発生するものではあっても
実務上、揉め事になることは少ないと言えるでしょうね。
履行不能、履行遅滞、債務不履行・・・。
「履行」については、さまざまな規定が設けられていますので、
次回以降で少し詳しく述べていくことにします。
今回は、このへんで。
どのような条文になっていたかというと、次のとおり。
(旧410条)
債権の目的である給付の中に、
初めから不能であるもの又は後に至って不能となったものがあるときは、
債権は、その残存するものについて存在する。
2 選択権を有しない当事者の過失によって給付が不能となったときは、
前項の規定は、適用しない。
それが、以下のように改正されました。
(改正410条)
債権の目的である給付の中に、
不能なものがある場合において、
その不能が選択権を有する者の過失によるものであるときは、
債権は、その残存するものについて存在する。
どうでしょうか?
原始的不能か、事後的不能かの場合分けがありません。
両者の違いが無くなり、
原始的不能の債権を無効なものとして扱わなくなりました。
するとどうなるか?
こちら側に過失があって
店側がサイベリアンを引渡せなくなった場合は、
ミニチュアダックスフンドに選択が特定される。
これは、旧法と一緒です。
しかし、その他のケースでは、
全て履行不能な債権を選択できることになりました。
要するに、残存債権を選択するなら、それもよし。
履行不能な債権を選択するなら、
履行不能であることの責任を問うて解決しなさい
ということですね。
まあ、しかし、
選択債権は日常的に発生するものではあっても
実務上、揉め事になることは少ないと言えるでしょうね。
履行不能、履行遅滞、債務不履行・・・。
「履行」については、さまざまな規定が設けられていますので、
次回以降で少し詳しく述べていくことにします。
今回は、このへんで。