ブログ 町の法律日記

いきなり!履行遅滞

履行期、それは履行期限

前回のブログで、選択債権について述べた際、
何度も「履行」という言葉を使用しました。

履行とは、まあ、契約等で定められた内容を
実行することですが、
「いつ」実行するのか、というのが「履行期」であり、
その履行期が到来しているのに実行しなければ、
「履行遅滞」という状態に陥ってしまいます。

履行遅滞というのは歴とした債務不履行の一種でして、
履行できるのに正当な理由なくそれをせず、
履行期(履行期限)を過ぎてしまった場合を言います。

んじゃ、その履行期限はどのようにして決まるのか?

実は色々な種類があるのですが、
今回は、そんなさまざまな履行期と履行遅滞にスポットを当て、
令和2年4月1日から施行された改正民法で何が変わったのかを
見ていきます。

履行期と履行遅滞

まずは、履行期と履行遅滞について、
条文を見てみましょう。

民法第412条がそれに当たるのですが、
第1項に変更はありません。

<新旧変わらず>
債務の履行について確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来した時から遅滞の責任を負う。

という「確定期限」についての規定がそれです。

はい、さっそく出てきましたね。期限!
つまり履行期限!!

以下、期限を種類別に述べていきます。

確定期限

民法第412条第1項にある「確定期限」とは、
例えば、私が最愛のワイフに対して
「今度のワイフの誕生日に花束をプレゼントするね」
と約束した場合の「ワイフの誕生日」のことです。

誕生日がいつかは明かせませんが、
「今度のワイフの誕生日」といえば、
社会通念上、言った日から最初に訪れる
ワイフの誕生日な訳ですから、
何年何月何日なのか、明らかでございます。

その何年何月何日が、確定期限であり、
その期限(履行期限)が到来したら、
私はワイフに花束をプレゼント(贈与)しなければなりませぬ。

花束を渡さずにワイフの誕生日を徒過してしまったら、
つまり誕生日の午後11時59分59秒までに渡さなければ、
履行遅滞になります。

履行遅滞になったら、どうなるのか?
損害が発生しているなら損害賠償請求・・・と言いたいところですが、
現実の世界では、ぶっ飛ばされてお終いかもしれませんね。

【改正点】不確定期限

先程の確定期限は、
履行期限がいつなのか明確なので、
何やら清々しさすら感じますが(?)、
それと異なり「不確定期限」というものもあります。

これが、改正民法において変わったところですが、
実務上の影響はほぼ無い・・・というか、
旧法時代にほぼ異論なく解釈されていたことを
明文化した(改正した)だけ、と言えます。

改正民法あるあるです。

対象となる条文は第412条第2項ですが、
新旧の条文は以下のとおりです。

<旧法>
債務の履行について不確定期限があるときは、
債務者は、その期限が到来したことを知った時から遅滞の責任を負う。

<新法>
債務の履行について不確定期限があるときは、
債務者は、その期限の到来した後に履行の請求を受けた時
又はその期限の到来したことを知った時のいずれか早い時から遅滞の責任を負う。

如何でしょうか?

「その期限の到来した後に履行の請求を受けた時」
というのが加わっているので、立派な改正じゃないか
と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、
この部分は、旧法時代にも期限が到来したものと解釈されていました。

もっとも、「請求を受けた」でなく、
解釈上「催告された」と表現されていましたが、
請求されるのも催告される(告げられる)のも
実務においては同じようなものです。

告げられたのだから、知ったものと擬制される、
というもっともな理屈ですね。

一応、例を挙げておきますね(必要無いですけどね・・・)。

私がチョージョに対して、
「東大に合格したら・・・褒めてあげる!」と約束した場合。
褒めるなんて・・・プライスレス!
なんか前にも同じような例を挙げたような気がしますが、
チョージョが東大に合格したとします。

私は、チョージョが合格したことを知ったとき
又は本人から合格したことを告げられたとき
履行期が到来し、褒めなければ履行遅滞に陥る訳ですね。

「告げる」と言えば旧法時代の解釈で言うところの「催告」にあたりますが、
「告げる」ということは「褒めてね」と請求されたこと、とするのが改正法です。

期限の定め無し

ここからは改正されていない部分なので、
オマケみたいなもんです。

履行期には、確定期限、不確定期限の他に、
「期限の定め無し」というものもあります。
杜撰とも言えますが、実社会ではよくあることです。

例えば、マイファミリーが
「マヌルネコかわいい!」
「ねえダディ、マヌルネコ買って!!」
とおねだりされ、
「う~ん、いいよ」
と生返事していたとしましょう。

まあ、確かにマヌルネコを買うと約束したことになりますが、
そんなネコ、容易に飼えないと思うんですよ。
で、「いつ買うのか」を定めていない約束ですよね?
これが「期限の定め無し」というもので、
いつから履行遅滞に陥るかというと・・・。

なんと、ファミリーから「買いなさい」と
履行の請求を受けたときなのです!

おぅ・・・いきなり履行遅滞。

恐ろしい話ですが、
それが、期限の定めが無い場合の原則です。

一方で、原則があれば、例外もあり。

例えば、期限を定めようがない
不法行為に基づく損害賠償請求なんかは、
不法行為時に直ちに遅滞となりますし、
他にも例外規定は存在します。

まあ、その辺については
あまり長くなっても何ですから、
またの機会に触れることにします。

今回は、この辺で。

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